ハノイでは、観光客向けに整えられた空間と、生活に根ざした空間が隣り合って存在している。
トイレは、その差が最も正直に表れる場所だ。
主場面とあわせて見ることで、都市の前提条件が立体的に見えてくる。
線路沿いカフェ
〈立地条件がつくる空間〉
■ 線路沿いカフェ

観光名所として人気の線路沿いカフェ。
列車と客席の距離の近さが、この場所特有の緊張感と非日常性をつくっている。
■ 線路沿いカフェのトイレ

線路沿いという制約の強い立地条件の中で、
設備は「置ける場所に、置ける形で」成立している。
列車がすぐ脇を通過する線路沿いカフェは、ハノイらしい非日常体験として人気が高い。
トイレを見ると、この場所が極めて制約の多い立地の上に成り立っていることがわかる。
階段下の空間を利用したトイレの設備は最小限で、「置ける場所に、置ける形で」成立している。
「トイレットペーパーは流さず、ゴミ箱へ」という注意書きがある。
同様の表示は、街なかのカフェやホテル、空港のトイレでも繰り返し目にした。
ハノイでは、トイレットペーパーを流さないことが、都市全体で共有されている前提条件なのだと理解した。
この「前提」を知っているだけで、以降の空間はすっと読み取れるようになる。
ローカルカフェ(市場近く)
〈日常とインフラ〉
■ ローカルカフェ(ドンスアン市場近く)

市場近くにあるローカルカフェ。
観光向けというより、生活の延長にある空間だ。
■ ローカルカフェのトイレ

トイレに書かれた注意書きは、
衛生意識というより、下水や配管条件との付き合い方を示している。
ドンスアン市場近くのローカルカフェは、観光というより生活の延長にある場所だ。
トイレには、日本人には少し意外に感じる注意書き(=トイレにゴミ(使用済みトイレットペーパーも含む)を流さないで)があるが、
それは衛生意識の違いではなく、下水や配管条件との付き合い方の違いだと感じる。
日常空間の中に、都市インフラの前提がそのまま表れている。
ホテル
〈国際基準とローカル運用〉
■ ホテルの部屋

ハノイ市内のホテル客室。
落ち着いた設えで、日本人にもなじみやすい空間になっている。
■ ホテルのトイレ

見た目や清掃状態は国際基準に近いが、
使い方や運用にはローカルな前提が残っている。
ホテルのトイレは、見た目も清掃状態も整っており、日本人でも違和感なく使える。
一方で、使い方の注意や運用の細部には、ローカルな前提が残っている。
国際基準の空間に、地域固有の条件が静かに重なっている様子が印象的だった。
ノイバイ国際空港
〈都市の最低ライン〉
■ ノイバイ国際空港

ノイバイ国際空港の内部空間。
多国籍の利用者を想定した、都市の玄関口としての設えが見える。
■ ノイバイ国際空港のトイレ

空港のトイレは、その国のトイレ事情におけるひとつの基準になる場所だと思う。
空港のトイレは、その国のトイレ事情の「ひとつの基準」が表れる場所だと思う。
ノイバイ国際空港のトイレは全体として清潔で、使い方に迷うことは少ない。
ただし、日本の空港と比べると、細部の設えや更新頻度には違いがある。
この差は、社会全体がどこにコストや優先順位を置いてきたかの違いだと感じた。
ルーフトップバー
〈体験としての空間〉
■ ルーフトップバー

夜景を楽しむルーフトップバー。
食事や会話と同様に、時間の流れそのものがデザインされていると感じた。
■ ルーフトップバーのトイレ

トイレもまた、空間体験の一部としてデザインされている。
夜景を楽しむルーフトップバーでは、トイレも空間体験の一部として扱われている。
特別な設備があるわけではないが、雰囲気や見せ方が意識されている。
機能そのものより、「どう体験させるか」で、
トイレの位置づけは大きく変わるのだと感じた。
ハノイ編・まとめ
ハノイのトイレを通して見えてきたのは、
「きれいかどうか」という単純な評価ではなく、
どこまでを整え、どこからを割り切っているのかという、場所ごとの線引きだった。
それは設計の問題というより、インフラや運用、優先順位の積み重ねによって形づくられたものだと感じる。
トイレは、そうした判断の結果を最も率直なかたちで表に出してしまう。
都市の標準仕様を、静かに、しかし正直に映し出す場所なのだと思う。
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旅先のトイレから、その土地の前提条件や文化が見えてくる。
そうした視点に関心のある方は、
**「南インドのトイレ事情」**もあわせてご覧ください。
現地式トイレに悪戦苦闘しながら、身体感覚を通して理解していった体験を記録しています。









