令和4年6月の建築基準法改正で「省エネ」「木材利用」促進へ

改正基準法テキスト

今年度(令和4年6月17日)に公布された建築基準法の改正「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」では、さらなる「省エネ対策」や「木材利用」が盛り込まれ、順次施行されます。内容がてんこ盛りなので、お施主様や私たち設計士やに直接関係のありそうなことを簡単にまとめておきたいと思います。

既存住宅の省エネ改修に対し低金利融資制度の創設(住宅金融支援機構)

2022年10月から性能のよい既存住宅の購入や購入後に性能向上リフォームを実施することで【フラット35】の金利が優遇される制度が新設されました。これは優良な住宅ストック(中古住宅)を増やして活用していこうということ、それがCo2削減となり地球温暖化防止につながるという方針から来ています。
参考:【フラット35S】【フラット35】リノベ (住宅金融支援機構)
※2022年10月より施行

住宅トップランナー制度の対象を拡充

住宅トップランナー制度とは、建売戸建て、注文戸建て、賃貸アパートなどの住宅供給事業者に対し、一定以上の省エネ性を持たせることを定めたもの。例えば住宅の断熱性能の確保や効率の高い冷暖房、換気、給湯機器等の建築設備を導入することによって一次エネルギー消費量を低減させることを目的としている。一次エネルギーとは住宅で使用するエネルギー、例えば冷暖房、換気設備、給湯、照明などで使用するエネルギーのこと。令和4年の基準法改正で、新たに分譲マンションが対象に加わります。
※2023年6月より施行予定

省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となる高さ制限等の合理化

形態規制の合理化(国土交通省HPより)

形態規制の合理化(国土交通省HPより)

省エネ改修で屋根の上などに高効率の熱源設備を設置する際に高さ制限内に収まらない場合は、環境を害さない範囲で特例許可が下ります。これは、第一種低層住居専用地域や高さ制限のある地域の既存住宅に再生可能エネルギー装置を新たに設置したり、高効率の熱源装置を設置しやすくすることが目的です。
※2023年6月より施行予定

建物の販売や賃貸の広告などに省エネ性能を表示する

表示制度は、建築物の販売又は賃貸を行う事業者に対して、その販売又は賃貸を行う建築物について、エネルギー消費性能の表示に努めなければならない制度です。法改正により、建築物の販売・賃貸事業者に対するエネルギー消費性能の表示の努力義務に関して新たな措置が加わりました。
※2024年6月から施行予定

再エネ設備の導入を促進

市町村が地域の実情に応じて、太陽光発電、太陽熱利用、地中熱利用、バイオマス発電などの再生エネルギー設備の設置を促進する区域を設定します。その区域内で実施される再エネ設備導入などの事業費などについて何らかの優遇措置が設けられるもようです。
※2024年6月から施行予定

木材利用を促進するために建築基準(防火規制)を合理化する

これまで規模の大きい建物(3000㎡以上)を木造で建てる場合、壁や柱を石膏ボードなどで囲う必要があり木造の良さを実感しにくかったのですが、構造部材をそのままあらわしにできるよう新たな構造方法を導入します。また、防火上他と区画された部分であれば、メゾネットなどの中間床や柱・壁等を木でつくることが可能になります。高層階と低層階からなる建物に置いて、延焼を防ぐ壁などを設ければ、低層部分を木造でつくることができます。
※2024年6月から施工予定

原則として全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務づけ

全ての新築住宅が省エネ基準適合義務化へ

全ての新築住宅・非住宅が省エネ基準適合義務化へ

現在では中大規模の非住宅を対象として省エネ基準に適合することを義務付けていますが、改正後は、中大規模の住宅及び300㎡以下の小規模の住宅・非住宅でも省エネ基準を上回る省エネ性能に適合させることが義務化されます。また、現行では、建築主に対し建物の省エネ基準適合性について建築士が説明する義務が課されていますが、施行後は建築主に対して省エネ性能の向上について説明することが努力義務とされます。
※2025年4月から施行予定

建築確認を要する建物規模の見直し

4号特例が変わります(国土交通省パンフレット)

4号特例が変わります(国土交通省パンフレット)

「4号特例」といわれる「2階建て以下」かつ「延べ床面積500㎡以下」の木造住宅等では、都市計画区域内で建築確認の対象となる場合でも、建築士が設計を行った場合は建築確認の際に構造耐力関係の審査を省略することとなっており、また、それらの建物について建築士である工事監理者が設計図通りに施工されたことを確認した場合には、検査を省略することが可能でした。改正後は、延べ床面積300㎡以上の木造建築物では構造の安全性の確認が必要となります。これは近年木造でも大スパンの建物が増えていることなどが理由とされています。
※2025年4月から施行予定

二級建築士の業務範囲の見直し

建築士法が改正され、従来では「高さ13メートル以下かつ軒高9メートル以下」の建築物について担えることとしていた二級建築士の業務範囲を「階数が3以下かつ高さ16メートル以下」の建築物に改正されます。建築基準法の見直しに伴い、簡易な構造計算によって構造安全性を確かめることが可能な範囲が見直されることに伴って二級建築士の業務範囲も見直されることとなりました。

主な内容は以上となります。

以下は木造建築物に関する改正項目のスケジュール(国土交通省パンフレット)です。

改正された項目は今後順次施行されていきます

改正された項目は今後順次施行されていきます

とても大きなところでは、2025年から全ての新築住宅・非住宅の省エネ基準適合を義務化することではないかと思います。施行は少し先ではありますが、これから家を建てる方は先んじて省エネ基準に適合させた計画とした方が良いでしょう。時が経って中古住宅として売買される時に省エネ基準に適合しているかしていないかは大きく影響がありそうです。

【関連サイト】国土交通省HP

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