道路が狭く老朽化した木造建物が密集して建つ地域(=木密(もくみつ)地域)では、火災が発生した際に延焼が広がる危険性が高くなります。東京都ではそのような地域の情報をホームページで公開し、火災の危険性を防除するための取り組みとして「新防火地域」という新たな防火規制区域を設けています。
東京都の木密地域
下の図は東京都都市整備局が公開しているデータから「木造住宅が密集している地域」を抽出したものです。茶色の部分が「木造住宅密集地域」、青の部分が「不燃化の状況や住宅の密度が木造住宅密集地域と同等である地域」で、どちらも火災時に延焼が起こりやすい注意すべき地域となります。山手線の外周部分を中心に広く分布していることがわかります。
出典:東京都都市整備局 東京都不燃化ポータルサイト を元に筆者が対象地域を抽出
東京都独自の規制「新防火地域」とは
東京都が独自に指定している「新防火地域」に該当する土地に新たに建物を建てる場合、定められた防火規定を守らなければならないため注意が必要です。木造密集地域の災害時の安全性を高めるために建築物の不燃化を促し、木造密集地域が再度形成されるのを防ぐためです。
そもそも都市計画法第9条では、その地域の特性に合わせ「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」などが定められています。「防火地域」は最も高い防火性が求められる地域で幹線道路沿いや駅周辺など人が多く集まる地域が指定されています。「準防火地域」は「防火地域」についで厳しい防火規制があり、防火地域を取り巻く周辺の地域が指定されています。
「新防火地域」は「防火地域」「準防火地域」の中間くらいの位置づけになっています。
新防火地域に該当しているか調べる方法
その土地が「新防火地域」に該当しているかどうかは、東京都の「新たな防火規制区域の指定区域図」から調べることができます。もし新防火地域に該当しても、木造の戸建住宅は建てられるでしょうか?
新防火地域に指定されている土地に建物を建てる場合は、原則として準耐火建築物以上としなければなりません。かつ延べ床面積が500㎡を超えるものは耐火建築物等にする必要があります。
一般的に戸建て住宅は500㎡以下に該当するので準耐火建築物以上という条件が課せられます。とはいえ、RC造や鉄骨造はもちろん、木造でも「燃えしろ設計」を採用したり、外壁に耐火性の高い材料を使うなどの対応で建てることが可能です。
木造住宅を準耐火建築物で建てる場合の注意点
繰り返しになりますが、もし「新防火地域」に該当している土地でも木造の戸建住宅を建てることは可能です。ただし、燃えしろ設計(梁・柱などの部材を厚くして耐火性を確保)にしたり、外壁に耐火性のある材料を使うため、その分建設費用が高くなったり、デザインの自由度が限られる可能性もあります。
一方で、新防火地域では建蔽率が緩和されたり、その結果容積率も増えるためより広い家が建てられる可能性(=メリット)もあります。周辺の建物が建て替えのたびに防火性が高い建築物に置き換わっていくため、将来は防火性の高い地域になっていくということも、ひとつのメリットと考えることができるでしょう。
東京都の「新防火地域」については、リクルートSUUMOのサイトでも詳しくお話しています。興味のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
▶新防火地域とは?木造住宅も建てられる?メリット・デメリットや注意点なども解説 bySUUMO
【参考】
東京都整備局「新たな防火規制について(制度の概要)」